📅 2025-12-30 23:00
🕒 読了時間: 24 分
🏷️ JOURNEY
![]()
Evergreen Reserves社のEMPATHY事件が解決した翌日、今度はストレージ容量不足に関する相談が届いた。第二十九巻「再現性の追求」の第369話は、旅程の全行程で体験を設計する物語である。
「探偵、我々のストレージは、限界です。プライベートクラウドで4テラバイトまで使えます。しかし、現在3.8テラバイト使用中です。残り200ギガバイトしかありません。そして、4社合併により、データ量が急増しています。毎月50ギガバイト増えています。あと4ヶ月で上限です。オンプレミスサーバーへの移行を検討していますが、移行中にシステムが止まるリスクが怖いです」
Acme Data Solutions社 の情報システム部長、品川出身の山本誠は、焦燥した表情でベイカー街221Bを訪れた。彼の手には、ストレージ使用率のグラフ(95%を示す赤い線)と、それとは対照的に「On-Premise Storage Migration Plan 2026」と記された移行計画資料が握られていた。
「我々は、データ分析サービスを提供しています。従業員120名。年商28億円。2024年10月に4社が合併しました。A社(当社)、B社、C社、D社。合併により、従業員が60名から120名に倍増。データ量も急増しました」
Acme Data Solutions社の現状: - 設立:2010年(データ分析サービス) - 従業員数:120名(合併前60名) - 年商:28億円(合併前12億円) - ストレージ:プライベートクラウド4TB(使用中3.8TB) - 問題:容量不足、4社合併によるデータ急増、移行リスク
山本の声には深い危機感があった。
「現在のストレージ構成は以下の通りです。プライベートクラウド:月額18万円、容量4TB、バックアップ付き。しかし、容量を増やすことができません。プロバイダーの仕様上、4TBが上限です。8TBプランはありません。
データの内訳を説明します。顧客データベース:1.2TB(顧客500社の分析データ)。分析レポート:0.8TB(過去5年分のPDF)。バックアップデータ:1.5TB(システムバックアップ)。その他(メール、ドキュメント):0.3TB。合計3.8TB」
ストレージ使用量の推移:
2024年1月:2.8TB - 合併前(A社のみ) - 月間増加:約10GB
2024年10月:3.5TB(合併直後) - 4社のデータを統合 - B社:0.3TB、C社:0.25TB、D社:0.15TB追加
2024年12月:3.8TB(現在) - 合併後の月間増加:約50GB - 理由:4社の顧客データが統合され、分析件数が増加
予測: - 2025年4月:4.0TB(上限到達) - システムダウンのリスク
山本は深くため息をついた。
「オンプレミスサーバーへの移行を検討しています。初期費用:サーバー購入800万円、容量20TB、5年間使用可能。月額費用:電気代・保守費5万円。5年間総額:800万円 + 5万円 × 60ヶ月 = 1,100万円。プライベートクラウド継続の場合:18万円 × 60ヶ月 = 1,080万円。
コストはほぼ同じです。しかし、オンプレミスは容量20TBで余裕があります。プライベートクラウドは4TBで限界です。だから、移行したいのですが、移行中にシステムが止まるリスクが怖いです。我々のサービスは24時間365日稼働です。1時間でも止まれば、顧客から大クレームです」
「山本さん、ストレージを一括で移行すれば、最も早く完了すると思っていますか?」
私の問いに、山本は即答した。
「はい、週末に一気に移行すれば、最短で終わると思っています。しかし、失敗したら、月曜日の業務開始に間に合いません。それが怖いです」
現在の理解(一括移行型): - 期待:週末一括移行で最短完了 - 問題:移行の全行程が見えていない、失敗時のリスクが高い
私は、旅程の全行程で体験を設計する重要性を説いた。
「問題は、『一括で移行する』という危険な賭けです。JOURNEY——旅程。カスタマージャーニー。顧客体験の全行程を段階的に設計します。認知、検討、決定、利用、継続。各段階で何が起こるか、何が必要か。これを明確にすることで、再現可能な移行が実現します」
「一括で賭けるな。JOURNEYで移行の全行程を段階的に設計し、リスクを最小化せよ」
「データは、いつも『企業の記憶』だ。その移行は、記憶を新しい場所へ運ぶ旅」
「JOURNEYで設計せよ。認知、検討、決定、利用、継続。5段階の全行程が見えれば、リスクが明らかになる」
3人のメンバーが分析を開始した。Geminiがホワイトボードに「JOURNEYフレームワーク」を展開した。
JOURNEYの5段階: 1. Awareness(認知):現状の課題を認識する 2. Consideration(検討):選択肢を比較検討する 3. Decision(決定):最適な選択を決定する 4. Use(利用):実際に使用を開始する 5. Loyalty(継続):長期的に使用を継続する
「山本さん、まずストレージ移行をJOURNEYの5段階で設計しましょう」
ステップ1:Awareness(認知)段階の設計(1週間)
現状の課題認識:
課題1:容量不足の切迫性 - 現在:3.8TB / 4TB(95%使用) - 月間増加:50GB - 上限到達予測:4ヶ月後(2025年4月)
課題2:移行リスクの具体化 - データ移行中のシステム停止:最大24時間 - 移行失敗時の復旧時間:最大72時間 - 顧客への影響:サービス停止による損失 約500万円/日
課題3:4社統合データの複雑性 - A社データ:2.8TB(構造化データ、整理済み) - B社データ:0.3TB(非構造化データ、整理不十分) - C社データ:0.25TB(重複データあり) - D社データ:0.15TB(古いバージョンのシステム)
認知段階の結論: - 一括移行は高リスク - 段階的移行が必須 - 4ヶ月以内に完了必須
ステップ2:Consideration(検討)段階の設計(2週間)
選択肢の比較:
選択肢1:プライベートクラウド継続(容量増設不可) - メリット:現状維持、リスクなし - デメリット:容量4TB上限、4ヶ月後にシステムダウン - 評価:×(選択肢として不適)
選択肢2:パブリッククラウド移行(AWS S3など) - メリット:容量無制限、拡張性高い - デメリット:月額費用が高額(20TB: 月35万円)、5年間2,100万円 - 評価:△(コスト高)
選択肢3:オンプレミスサーバー移行 - メリット:容量20TB、5年間1,100万円(最安) - デメリット:初期投資800万円、移行リスク - 評価:◎(コスト最適、容量十分)
選択肢4:ハイブリッド(オンプレミス + クラウド) - メリット:リスク分散、段階的移行可能 - デメリット:管理が複雑 - 評価:○(移行期間のみ有効)
検討段階の結論: - オンプレミス移行を選択 - ただし、移行期間中はハイブリッド構成(プライベートクラウド + オンプレミス並行稼働)
ステップ3:Decision(決定)段階の設計(2週間)
段階的移行計画の策定:
Phase 1:準備期間(Month 1-2) - オンプレミスサーバー発注・設置 - ネットワーク構築 - バックアップ体制構築 - 移行リハーサル実施
Phase 2:テスト移行(Month 3) - D社データ(0.15TB)を先行移行 - 理由:データ量が最小、失敗時の影響が限定的 - 並行稼働:プライベートクラウドとオンプレミス両方で稼働 - 検証期間:2週間
Phase 3:段階的本移行(Month 4-6) - Month 4:C社データ(0.25TB)移行 - Month 5:B社データ(0.3TB)移行 - Month 6:A社データ(2.8TB)移行 - 各月末に移行実施(金曜夜~日曜) - 並行稼働継続(移行後2週間は両方稼働)
Phase 4:完全移行(Month 7) - プライベートクラウド解約 - オンプレミスのみで運用開始 - 監視体制強化
リスク管理策:
リスク1:移行失敗 - 対策:並行稼働により、失敗時はプライベートクラウドに即復帰 - 復旧時間:最大1時間
リスク2:データ破損 - 対策:移行前に完全バックアップ、移行後にデータ整合性チェック - 検証ツール:MD5ハッシュ値比較
リスク3:性能劣化 - 対策:移行後2週間の性能モニタリング、問題発生時は設定調整
ステップ4:Use(利用)段階の設計(Month 1-6)
Month 1:オンプレミスサーバー導入
サーバー選定: - 機種:Dell PowerEdge R750 - 容量:20TB(HDD 4TB × 5台 RAID5構成) - CPU:Xeon Silver 4310(12コア) - メモリ:64GB - 価格:800万円
ネットワーク構築: - 10Gbps専用回線 - VPN接続(セキュリティ確保)
Month 2:バックアップ体制構築
3-2-1ルール適用: - 3つのコピー:本番データ、オンプレミスバックアップ、クラウドバックアップ - 2種類のメディア:HDD、クラウド - 1つはオフサイト:AWS Glacier(月額2万円)
Month 3:D社データ移行(0.15TB)
移行手順: 1. 金曜日22:00:D社データをオンプレミスにコピー開始(rsyncコマンド使用) 2. 土曜日02:00:コピー完了、MD5ハッシュ値検証 3. 土曜日06:00:オンプレミスで試験稼働開始 4. 土曜日-日曜日:並行稼働(プライベートクラウドとオンプレミス両方) 5. 月曜日09:00:本番稼働開始、社員に通知
結果: - 移行成功、ダウンタイム0分 - データ整合性100% - 性能:応答時間がプライベートクラウドより15%向上
Month 4-6:C社、B社、A社データ移行
各月同様の手順で段階的移行: - C社(0.25TB):Month 4完了 - B社(0.3TB):Month 5完了 - A社(2.8TB):Month 6完了(移行時間:金曜夜~日曜朝)
Month 6の最大移行(A社2.8TB): - コピー時間:約18時間(10Gbps回線で転送速度800MB/秒) - MD5検証時間:約3時間 - 合計:21時間(金曜22:00~日曜19:00完了)
ステップ5:Loyalty(継続)段階の設計(Month 7以降)
Month 7:プライベートクラウド解約
解約手続き: - 全データ移行完了確認 - プライベートクラウドのデータ削除 - 解約申請(月末解約)
オンプレミス単独運用開始: - 監視ツール導入:Zabbix(オープンソース) - アラート設定:ストレージ使用率80%でアラート
Month 8-12:運用最適化
性能モニタリング: - 応答時間:平均120ms(プライベートクラウド比15%向上) - スループット:800MB/秒 - 稼働率:99.98%
容量管理: - 現在使用量:4.2TB / 20TB(21%使用) - 月間増加:50GB - 上限到達予測:26ヶ月後(2027年2月)
コスト比較(年間):
Before(プライベートクラウド): - 月額18万円 × 12ヶ月 = 216万円/年
After(オンプレミス): - 電気代:月3万円 × 12ヶ月 = 36万円/年 - 保守費:月2万円 × 12ヶ月 = 24万円/年 - 合計:60万円/年
年間削減額: - 216万円 - 60万円 = 156万円/年
5年間総コスト比較:
Before(プライベートクラウド継続): - 216万円 × 5年 = 1,080万円(ただし容量不足で不可能)
After(オンプレミス): - 初期投資:800万円 - 5年間運用費:60万円 × 5年 = 300万円 - 合計:1,100万円
ROI(5年間): - 削減額:156万円/年 × 5年 = 780万円 - 初期投資:800万円 - 5年目に投資回収、6年目以降は年間156万円の削減効果
Month 7:移行完了(2025年7月)
最終結果:
KPI1:移行期間 - 計画:7ヶ月(Month 1-7) - 実績:7ヶ月(計画通り)
KPI2:ダウンタイム - 目標:0分(並行稼働により) - 実績:0分 - 達成率:100%
KPI3:データ整合性 - 目標:100%(全データ完全移行) - 実績:100%(MD5ハッシュ値で検証) - 達成率:100%
KPI4:性能向上 - 応答時間:140ms → 120ms(14%向上) - スループット:600MB/秒 → 800MB/秒(33%向上)
KPI5:容量余裕 - Before:4TB(95%使用、残り0.2TB) - After:20TB(21%使用、残り15.8TB) - 余裕期間:26ヶ月分
KPI6:コスト削減 - 年間156万円削減 - 5年間780万円削減
情報システム部 山本部長の声:
「JOURNEYで段階的に移行したことが、成功の鍵でした。最初、私は『週末一括移行』を考えていました。しかし、失敗のリスクが怖かった。
JOURNEYの5段階で設計したことで、全行程が見えました。Awareness(認知)で課題を明確にし、Consideration(検討)で選択肢を比較し、Decision(決定)で段階的移行を決定しました。
Use(利用)段階では、D社データから先行移行しました。最小リスクで始め、成功体験を積み重ねました。C社、B社と段階的に移行し、最後にA社の大規模データを移行しました。並行稼働により、ダウンタイム0分を実現しました。
Loyalty(継続)段階では、運用を最適化しました。性能は14%向上し、容量は26ヶ月分の余裕ができました。年間156万円のコスト削減も実現しました。
何より、移行中に一度もシステムが止まらなかったことが誇りです。顧客からのクレームもゼロでした。JOURNEYで全行程を設計したおかげです」
従業員Aさん(データアナリスト)の声:
「移行前は不安でした。『システムが止まるのでは?』『データが消えるのでは?』と。しかし、段階的移行で、不安は消えました。
D社データの移行が成功した時、『これなら大丈夫だ』と思いました。並行稼働だったので、万が一の時も安心でした。そして、新しいオンプレミスサーバーは速いです。データ分析の応答時間が短くなり、仕事が効率化されました」
その夜、JOURNEYの本質について考察した。
Acme Data Solutions社は、「週末一括移行」という危険な賭けを考えていた。しかし、ストレージ移行は、一度の賭けで成功するものではない。
JOURNEY——旅程。カスタマージャーニーの手法を、ストレージ移行に適用した。Awareness(認知)、Consideration(検討)、Decision(決定)、Use(利用)、Loyalty(継続)。5段階で全行程を設計した。
認知段階で課題を明確にし、検討段階で選択肢を比較し、決定段階で段階的移行を計画した。利用段階では、D社から順に段階的移行を実施し、並行稼働によりダウンタイム0分を実現した。継続段階では、運用を最適化し、年間156万円のコスト削減を達成した。
7ヶ月の移行期間、ダウンタイム0分、データ整合性100%、性能14%向上、容量26ヶ月分の余裕、年間156万円削減。
「一括で賭けるな。JOURNEYで旅程の全行程を段階的に設計せよ。認知、検討、決定、利用、継続。5段階が見えれば、リスクが最小化される。段階的な設計が、再現可能な移行を実現する」
次なる事件もまた、旅程の全行程で体験を設計する瞬間を描くことになるだろう。
「JOURNEY——旅程。全行程を段階的に設計せよ。認知、検討、決定、利用、継続。5段階で体験を設計すれば、リスクが見え、成功への道が開ける」——探偵の手記より
🎖️ Top 3 Weekly Ranking of Classified Case Files
あなたのビジネス課題、Kindle Unlimitedで解決!
月額980円で200万冊以上の本が読み放題。
ROI探偵事務所の最新作も今すぐ読めます!
※対象となる方のみ無料で体験できます