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要約カード

JA 2026-02-11 23:00
LOGICロジックモデル成果の可視化

Novatech社の資格支援制度改革。LOGICモデルが描いた、学習から成長への確かな道筋。

ROI事件ファイル No.412『資格という名の羅針盤』

JA 2026-02-11 23:00

ICATCH

資格という名の羅針盤


第一章:見えない進捗

「社員が、どこまで勉強しているのか分からないのです」

Novatech社の人事部長は、机の上に積まれた資格テキストを指差した。それらは全て、2級建築施工管理技士の参考書だ。

「当社では、若手社員の資格取得を支援しています。テキスト代は会社が負担し、合格者には報奨金も出します。しかし、実際に合格するのは、毎年受験者の3割程度なのです」

人事部長の声には、もどかしさが滲んでいた。

「問題は、学習の進捗が全く見えないことです。『勉強していますか』と聞けば、みんな『はい』と答える。しかし、実際に模擬試験を受けさせると、半数以上が合格ラインに達していません」

彼が取り出した資料には、過去三年間の受験結果が記録されていた。受験者数は年々増えているが、合格率は横ばいのままだ。

「さらに深刻なのは」と人事部長が続けた。「資格取得が、離職率の低下に繋がっていないことです。資格を取得しても、その後のキャリアパスが不明確で、結局は他社に転職してしまう」

「つまり」とClaudeが整理した。「投資した教育費用が、会社への愛着や成長意欲に結びついていない、と」

「その通りです」と人事部長が頷いた。「資格支援制度を、単なる『テキスト配布』から、『成長の見える化』へと転換したいのです。そのために、デジタルツールの導入を検討していますが、何をどう測定すべきかが分からないのです」

それは、投資と成果の因果関係が見えない、という典型的な課題だった。

第二章:因果の連鎖を描く

「この案件には、LOGICモデルでのアプローチが最適ですね」

Geminiがホワイトボードに、一本の矢印を描いた。その矢印は、左から右へと伸び、いくつかの段階に分かれている。

「LOGICモデル——正式にはロジックモデルとは」と私は説明を始めた。「投入(Input)から成果(Outcome)に至るまでの因果関係を、論理的に整理するフレームワークです」

「具体的には」とClaudeが補足した。「五つの段階に分けて考えます。投入(Input)、活動(Activities)、産出(Output)、成果(Outcome)、そして影響(Impact)——この連鎖を可視化することで、『何が何を生み出しているのか』が明確になります」

人事部長が首を傾げた。「しかし、教育効果というのは測定が難しいのでは」

「だからこそ」と私は答えた。「各段階を明確に定義し、測定可能な指標に落とし込む必要があるのです」

[ステップ1:投入(Input)の定義]

「まず、投入、つまり会社が何を提供しているかを整理しましょう」とGeminiが提案した。

人事部長が説明を始めた。「現在、会社が負担しているのは、テキスト代が一人あたり約2万円。そして、合格者への報奨金が5万円です」

「それだけですか」と私は尋ねた。

「ええ、基本的には」

「では」とClaudeが指摘した。「学習時間の確保、質問できる環境、先輩社員からのアドバイス——これらは提供されていませんか」

人事部長が考え込んだ。「確かに、業務時間中に勉強することは黙認していますし、先輩が教えることもあります。しかし、それを『投入』として認識していませんでした」

「そこが重要です」と私が強調した。「LOGICモデルでは、目に見えない投入も含めて全て洗い出します。それが、後の成果との因果関係を理解する鍵になるからです」

[ステップ2:活動(Activities)の明確化]

「次に、活動です」とGeminiが続けた。「社員が実際に何をしているかを具体化します」

「現状では」と人事部長が答えた。「各自がテキストを読み、問題集を解く。それだけです」

「それでは不十分ですね」とClaudeが指摘した。「学習活動を、もっと構造化する必要があります」

私はホワイトボードに項目を書き出した。「例えば、週次の学習計画の作成。毎日の学習時間の記録。月次の模擬試験。先輩社員との学習会。オンライン質問掲示板での質疑応答——これらの活動を、システムで支援するのです」

「そして重要なのは」とGeminiが付け加えた。「これらの活動を『測定可能』にすることです。何時間勉強したか、何問解いたか、何回質問したか——全てをデータとして記録します」

[ステップ3:産出(Output)の測定]

「三つ目は、産出です」と私が説明した。「活動の直接的な結果として、何が生まれるかを定義します」

「例えば」とClaudeが具体例を示した。「総学習時間が100時間。解いた問題数が500問。参加した学習会が10回。これらは全て、活動の『産出』です」

「しかし」と人事部長が疑問を呈した。「それらの数字が多ければ、合格するのですか」

「必ずしもそうではありません」と私は答えた。「だからこそ、次の『成果』との関連を分析する必要があるのです」

[ステップ4:成果(Outcome)の定義]

「成果とは」とGeminiが説明した。「産出によって生じる変化です。Novatech社の場合、短期的な成果は『資格試験の合格』ですね」

「ええ」と人事部長が頷いた。

「しかし」と私が続けた。「中期的な成果は何でしょうか。資格を取得した後、社員にどんな変化が起きることを期待していますか」

人事部長が答えた。「現場での実務能力の向上。そして、会社への愛着が高まり、離職率が下がることです」

「それが成果です」とClaudeが整理した。「そして、それを測定するには、資格取得後の業務評価や、定着率のデータが必要になります」

[ステップ5:影響(Impact)の描写]

「最後に、影響です」と私が説明した。「これは、組織全体や社会に与える長期的な変化を指します」

「Novatech社の場合」とGeminiが続けた。「優秀な技術者が定着することで、施工品質が向上する。顧客満足度が上がる。会社の評判が高まり、新規採用も容易になる——これらが『影響』です」

人事部長の表情が変わった。「つまり、資格支援制度は、単なる教育投資ではなく、会社全体の競争力に影響する戦略的施策だ、と」

「その通りです」と私は答えた。「LOGICモデルが可視化するのは、この因果の連鎖なのです」

第三章:測定の設計

「では、このLOGICモデルを、どう実装すればよいでしょうか」と人事部長が尋ねた。

「デジタルツール、つまり資格支援アプリを開発します」とClaudeが答えた。「しかし、重要なのは『何を測定するか』を明確にすることです」

私はホワイトボードに、測定指標の一覧を書き始めた。

「投入レベルの指標:提供したテキスト数、学習環境の質問対応率、先輩社員の関与時間」

「活動レベルの指標:一日の平均学習時間、週次計画の達成率、解いた問題数、参加した学習会の回数」

「産出レベルの指標:総学習時間、模擬試験の点数推移、質問掲示板の利用回数」

「成果レベルの指標:資格試験の合格率、合格後の業務評価の変化、1年後の定着率」

「影響レベルの指標:部署全体の施工品質評価、顧客満足度スコア、採用応募者数の推移」

人事部長が驚いた表情を見せた。「こんなに多くの指標を測定するのですか」

「全てを一度に測定する必要はありません」とGeminiが答えた。「重要なのは、段階的に測定範囲を広げていくことです」

「具体的には」と私が続けた。「最初の三ヶ月は、活動レベルと産出レベルの指標に集中します。学習時間、問題数、模擬試験の点数——これらを記録し、合格率との相関を分析するのです」

「そして」とClaudeが付け加えた。「その分析結果を基に、『どのような学習パターンが合格に繋がるか』を明らかにします。例えば、毎日30分の学習が、週末にまとめて3時間勉強するよりも効果的だ、といったパターンです」

「それが分かれば」とGeminiが続けた。「次の受験者に対して、効果的な学習パターンを推奨できます。これが、再現性の確立です」

第四章:見える成長

人事部長は、ホワイトボードに描かれた因果の連鎖を見つめていた。

「これまで、私たちは『テキストを配れば、合格者が増える』と単純に考えていました。しかし、実際には、投入から成果に至るまでに、多くの段階があったのですね」

「LOGICモデルの価値は」と私は答えた。「因果関係をブラックボックスにしないことです。何が何を生み出しているのか、どこで因果の連鎖が途切れているのか——それを可視化することで、改善の糸口が見えてきます」

Claudeが静かに言葉を添えた。「そして、測定することで初めて、『この施策は本当に効果があるのか』という問いに答えられるようになります」

人事部長が立ち上がり、深く頭を下げた。「ありがとうございます。来月から、パイロット版のアプリ開発を始めます」

彼が去った後、Geminiが感心したように言った。「LOGICモデルは、教育や福祉といった『成果が見えにくい』分野でよく使われますね」

「ああ」と私は答えた。「しかし、LOGICモデルの本質は、分野を問わない。投資と成果の因果関係を論理的に整理し、測定可能にする——この思考法は、あらゆる意思決定に応用できる」

窓の外では、建設現場のクレーンが動いていた。

四ヶ月後、Novatech社から報告が届いた。

パイロット版のアプリを使用した15名のうち、12名が資格試験に合格したという。合格率は80%——従来の3割から大幅に向上していた。

そして、分析の結果、合格者に共通するパターンが見つかった。「毎日最低30分の学習」「週次計画の達成率80%以上」「月次模擬試験での段階的な点数向上」——これらの指標が、合格を予測する明確なシグナルだったのだ。

因果の連鎖は、データによって証明された。

「投入から成果に至る道筋は、論理的に描けても、それが本当に機能するかは分からない。LOGICモデルが教えるのは、因果関係を仮説として立て、測定によって検証し、再現可能なパターンを見出すこと。それこそが、確実な成果を生む唯一の方法である」


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