📅 2026-01-07 23:00
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🏷️ JTBD
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Skyline Logistics社のRCD事件が解決した翌日、今度はNFC技術導入に関する相談が届いた。第三十巻「再現性の追求」の第377話は、顧客の本当の仕事を見出す物語である。
「探偵、我々には、7年前の失敗があります。NFC技術の導入を検討しましたが、当時は技術的ハードルが高く、断念しました。しかし、最近の展示会で、NFC技術の進化を実感しました。タッチするだけで情報が表示される。アプリ不要。これなら、我々の課題を解決できるかもしれません。しかし、何に使えばいいのか、明確ではありません」
Cobalt Solutions社 のマーケティング部長、六本木出身の佐々木美咲は、期待と不安が入り混じった表情でベイカー街221Bを訪れた。彼女の手には、7年前のNFC導入検討資料(2019年版)と、それとは対照的に「NFC Technology Implementation Plan 2026」と記された最新の技術提案書が握られていた。
「我々は、商業施設運営会社です。従業員180名。年商85億円。全国15の商業施設を運営しています。しかし、情報発信に課題があります。我々が発信する情報が、興味のある人以外に届いていません」
Cobalt Solutions社の現状: - 設立:2005年(商業施設運営) - 従業員数:180名 - 年商:85億円 - 運営施設:15施設(ショッピングモール、複合施設) - 問題:情報発信の非効率、アプリ利用率低い、効果測定困難
佐々木の声には深い焦燥感があった。
「現在の情報発信手段は以下の通りです。公式アプリ:ダウンロード数18,000件(来場者の1.2%)。メルマガ:登録者8,500名(来場者の0.6%)。SNS:フォロワー12,000人。ポスター・デジタルサイネージ:各施設に設置。しかし、どれも効果が薄いのです」
情報発信の実態:
公式アプリ(2022年リリース): - ダウンロード数:18,000件 - 月間アクティブユーザー:3,200名(18%) - 主な機能:施設マップ、イベント情報、クーポン配信 - 開発費:2,800万円 - 年間保守費:420万円
月間来場者数:150万人 アプリ利用率:3,200 ÷ 1,500,000 = 0.21%
重要な発見: - 99.79%の来場者はアプリを使っていない - アプリインストールというハードルが高すぎる
イベント参加率の実態:
Case 1:スタンプラリーイベント(2025年8月) - 参加条件:アプリダウンロード必須 - 景品:5,000円分の商品券(抽選100名) - 告知:ポスター150枚、SNS投稿20回 - 参加者:850名(来場者の0.057%) - 費用:250万円(景品・運営・告知) - 1参加者あたりコスト:2,941円
Case 2:新店舗オープンイベント(2025年11月) - 参加条件:なし(誰でも参加可能) - 景品:先着500名にノベルティ - 告知:ポスター200枚、SNS投稿30回 - 参加者:4,200名(来場者の0.28%) - 費用:180万円 - 1参加者あたりコスト:429円
重要な発見: - アプリ必須イベントは参加率が極めて低い(0.057%) - アプリ不要イベントは参加率が5倍高い(0.28%) - しかし、それでも99.72%の来場者は参加していない
佐々木は深くため息をついた。
「我々は、NFC技術で何ができるのか知りたいのです。情報発信、イベント管理。これらに活用できればと考えています。しかし、7年前と同じ失敗をしたくありません。顧客が本当に求めているものは何なのか。それが分からないのです」
「佐々木さん、NFC技術を導入すれば、顧客は喜ぶと思っていますか?」
私の問いに、佐々木は戸惑った表情を見せた。
「えっ、そうではないのですか? タッチするだけで情報が見られるなら、便利だと思っていました」
現在の理解(技術先行型): - 期待:NFC技術で便利さを提供 - 問題:顧客の本当の仕事が見えていない
私は、顧客が本当に達成したい仕事を見出す重要性を説いた。
「問題は、『技術を導入すれば顧客は喜ぶ』という考えです。JTBD——Jobs To Be Done。片付けるべき仕事。顧客は製品やサービスを『購入』するのではなく、何かの『仕事を片付ける』ために『雇う』のです。商業施設の来場者が本当に片付けたい仕事は何か。それを特定することで、再現可能な価値提供を実現します」
「技術を導入するな。JTBDで顧客の仕事を特定し、その仕事を片付ける手段としてNFCを使え」
「顧客は、いつも『何かを片付けたい』から来る。技術ではなく、仕事に焦点を当てよ」
「JTBDの3要素を分析せよ。機能的な仕事、感情的な仕事、社会的な仕事」
3人のメンバーが分析を開始した。Geminiがホワイトボードに「JTBDフレームワーク」を展開した。
JTBDの3要素: 1. 機能的な仕事(Functional Job):何を達成したいか 2. 感情的な仕事(Emotional Job):どう感じたいか 3. 社会的な仕事(Social Job):どう見られたいか
「佐々木さん、まず来場者が本当に片付けたい仕事を特定しましょう」
ステップ1:来場者インタビュー(2週間)
対象: - 平日来場者:30名(主婦、シニア、リモートワーカー) - 休日来場者:40名(ファミリー、カップル、若年層) - 合計:70名
質問設計: 1. 「なぜこの施設に来ましたか?」(来場動機) 2. 「施設で何をしたいですか?」(達成したい仕事) 3. 「施設で困ったことはありますか?」(未解決の仕事) 4. 「どんな情報があれば嬉しいですか?」(情報ニーズ)
インタビュー結果の分析:
機能的な仕事(Functional Job):
仕事1:「目的の店を見つけたい」(52名、74%) - 「初めて来た施設で、レストランの場所が分からない」 - 「トイレを探すのに10分かかった」 - 「子供服の店がどこにあるか分からない」
仕事2:「お得な情報を知りたい」(38名、54%) - 「今日限定のセールがあるなら知りたい」 - 「クーポンがあるなら使いたい」 - 「ポイント2倍デーとか、事前に知りたい」
仕事3:「イベントに参加したい」(28名、40%) - 「子供向けイベントがあるなら参加したい」 - 「でも、アプリをダウンロードするのは面倒」 - 「その場でサッと参加できるといい」
感情的な仕事(Emotional Job):
仕事4:「時間を無駄にしたくない」(45名、64%) - 「店を探してウロウロするのがストレス」 - 「情報を探すために複数のアプリを開くのが面倒」 - 「サッと調べて、サッと行動したい」
仕事5:「新しい発見をしたい」(35名、50%) - 「知らない店を見つけたい」 - 「おすすめの商品を知りたい」 - 「でも、押し付けがましい広告は嫌」
社会的な仕事(Social Job):
仕事6:「家族・友人と楽しい時間を過ごしたい」(42名、60%) - 「子供が喜ぶイベントに参加したい」 - 「友人に『いい場所知ってるね』と言われたい」 - 「SNSで自慢できる体験がしたい」
ステップ2:仕事の優先順位付け(1週間)
評価軸: - X軸:重要度(回答者の割合) - Y軸:未解決度(現状の解決手段の満足度)
評価結果:
| 仕事 | 重要度 | 未解決度 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 仕事1:目的の店を見つけたい | 74% | 85% | 最高 |
| 仕事4:時間を無駄にしたくない | 64% | 80% | 高 |
| 仕事6:家族と楽しい時間 | 60% | 70% | 高 |
| 仕事2:お得な情報を知りたい | 54% | 75% | 中 |
| 仕事5:新しい発見をしたい | 50% | 60% | 中 |
| 仕事3:イベントに参加したい | 40% | 90% | 中 |
重要な発見: - 最優先の仕事:「目的の店を見つけたい」(74%、未解決度85%) - 現状の施設マップ(紙・アプリ)では解決できていない - 特に「その場で、サッと知りたい」というニーズが強い
ステップ3:NFCソリューション設計(2週間)
仕事1への解決策:NFCタグ式スマートマップ
配置: - 各フロアのエレベーター前:15箇所 - メインエントランス:3箇所 - トイレ前:12箇所 - 合計:30箇所
機能: - NFCタグにスマホをタッチ → ブラウザで施設マップ表示 - 現在地から目的地までのルート表示 - 店舗の営業時間、混雑状況をリアルタイム表示 - アプリダウンロード不要
技術仕様: - NFCタグ:NFC Forum Type 2(ISO 14443A) - URL:https://cobalt-map.jp/floor/{floor_id}/tag/{tag_id} - 読み取り距離:5cm以内 - 対応デバイス:iPhone(iOS 13以降)、Android(NFC対応機種)
仕事3への解決策:NFCタグ式スタンプラリー
配置: - 各店舗に1個のNFCタグ(参加店舗20店)
機能: - NFCタグにタッチ → スタンプ獲得 - ブラウザでスタンプ数を表示 - 5個集めると抽選画面表示 - アプリダウンロード不要
景品: - 5個:500円クーポン(その場で使用可能) - 10個:1,000円クーポン - 15個:3,000円分商品券(抽選100名)
Month 1-2:パイロット導入(1施設)
導入施設:六本木ヒルズ店 - 来場者数:月12万人 - フロア数:5フロア - テナント数:85店舗
NFCタグ設置: - スマートマップ用:30箇所 - スタンプラリー用:20店舗
初期費用: - NFCタグ:50個 × 800円 = 4万円 - Webシステム開発:180万円 - デザイン・設置:40万円 - 合計:224万円
Month 3:効果測定
KPI1:スマートマップ利用率 - タッチ数:月8,500回 - 来場者数:月12万人 - 利用率:7.1%
比較: - アプリ利用率:0.21% - NFCタグ利用率:7.1%(33倍)
KPI2:スタンプラリー参加率 - 参加者:2,400名 - 来場者数:月12万人 - 参加率:2.0%
比較: - 従来(アプリ必須):0.057% - NFCタグ:2.0%(35倍)
KPI3:店舗売上への影響 - スタンプラリー参加店舗の売上増加率:平均+18% - クーポン利用率:78%(2,400名中1,872名) - クーポン利用時の平均購買額:3,200円
KPI4:顧客満足度 - アンケート実施(NFCタグ利用者500名) - 「便利だった」:427名(85%) - 「また使いたい」:445名(89%) - 「アプリより簡単」:462名(92%)
Month 4-6:全15施設への展開
展開計画: - 各施設にスマートマップ用NFCタグ30個 - スタンプラリー用NFCタグ20個 - 合計:750個
投資: - NFCタグ:750個 × 800円 = 60万円 - Webシステム拡張:320万円 - 設置・運営:180万円 - 初期投資合計:560万円
年間効果(全15施設、年換算):
従来のアプリ開発・保守費削減: - 従来計画:新アプリ開発3,200万円、年間保守600万円 - NFC導入:初期560万円、年間保守150万円 - 削減額:3,200万円 - 560万円 = 2,640万円(初期) - 削減額:600万円 - 150万円 = 450万円/年(保守)
スタンプラリー効果による売上増加: - 参加者:2,400名/月 × 15施設 = 36,000名/月 - クーポン利用率:78% - クーポン利用時の平均購買額:3,200円 - 月間売上増加:36,000名 × 78% × 3,200円 = 8,985万円/月 - 年間売上増加:8,985万円 × 12ヶ月 = 10億7,820万円/年 - 利益増加(粗利率25%):2億6,955万円/年
広告効果: - SNS投稿(#NFCスタンプラリー):月平均850件 - リーチ:推定120万人/月 - 広告換算価値:月500万円(年6,000万円)
合計年間効果: - 開発費削減:2,640万円(初期) + 450万円/年(保守) - 利益増加:2億6,955万円/年 - 広告効果:6,000万円/年 初年度合計:3億6,045万円 次年度以降:3億3,405万円/年
ROI: - (3億6,045万円 - 150万円) / 560万円 × 100 = 6,331% - 投資回収期間:560万円 ÷ 3億5,895万円 = 0.016年(6日)
その夜、JTBDの本質について考察した。
Cobalt Solutions社は、「NFC技術を導入すれば顧客は喜ぶ」という技術先行の発想を持っていた。しかし、顧客インタビュー70名から、本当の仕事が見えた。
最優先の仕事:「目的の店を見つけたい」(74%、未解決度85%) 第2の仕事:「時間を無駄にしたくない」(64%、未解決度80%) 第3の仕事:「イベントに参加したい」(40%、未解決度90%)
NFC技術は、これらの仕事を片付ける「手段」として雇われた。スマートマップで店を見つけ、スタンプラリーで気軽にイベント参加できる。アプリダウンロード不要で、タッチするだけ。
重要なのは、技術ではなく仕事に焦点を当てたことだ。NFCタグ利用率はアプリの33倍、スタンプラリー参加率は35倍になった。そして、年間売上10億7,820万円増加、ROI 6,331%、投資回収6日を実現した。
「技術を導入するな。JTBDで顧客の仕事を特定せよ。機能的・感情的・社会的な仕事を理解し、その仕事を片付ける手段として技術を雇うことで、再現可能な価値提供が生まれる」
次なる事件もまた、顧客の本当の仕事を見出す瞬間を描くことになるだろう。
「JTBD——Jobs To Be Done。顧客の仕事を特定せよ。機能的な仕事、感情的な仕事、社会的な仕事。技術ではなく、仕事に焦点を当てることで、真の価値が生まれる」——探偵の手記より
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