📅 2026-01-09 23:00
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🏷️ DOUBLE_DIAMOND
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TechNexus社のOKR事件が解決した翌日、今度はAI活用の全社展開に関する相談が届いた。第三十巻「再現性の追求」の第379話は、問題発見と解決策探索を分離する物語である。
「探偵、我々には、成功例があります。マーケティング部でChatGPTを活用し、SNS投稿文の作成時間を60%削減しました。営業部でもClaude Projectsを使い、提案資料の初期ドラフト生成を自動化しました。しかし、全社展開ができません。そして、基幹システム(SAPやOBICの人事労務管理システム)への組み込みは、親会社と共通で利用しているため困難です」
TechSavvy社 のDX推進室長、品川出身の高橋美咲は、焦燥感に満ちた表情でベイカー街221Bを訪れた。彼女の手には、マーケティング部・営業部でのAI活用成功事例レポート(各20ページ)と、それとは対照的に「AI Implementation Roadmap 2026-2027」と記された全社展開計画書が握られていた。
「我々は、ITソリューション企業です。従業員380名。年商95億円。しかし、AI活用は一部の部署に留まっています。来期の実施に向けて、様々な提案を受けることで、部内全体での導入ができるようになることを目指しています」
TechSavvy社の現状: - 設立:2008年(ITソリューション) - 従業員数:380名 - 年商:95億円 - AI活用状況:マーケティング部(15名)、営業部(25名)のみ - 問題:全社展開できない、基幹システム統合困難、具体的な導入箇所不明
高橋の声には深い焦燥感があった。
「特に課題なのが、来客時の受付対応です。現在、事務職員が毎回対応しており、業務が中断されます。1日平均15件の来客。1件あたり平均8分の対応時間。事務職員5名が、この対応だけで月150時間を費やしています。この部分を自動化したいのですが、どのようなAIツールを使えばいいのか分かりません」
来客受付対応の実態:
現状フロー: 1. 来客者がエントランスのインターホンを押す 2. 事務職員が応対(「はい、どちら様でしょうか?」) 3. 来客者が訪問目的を説明(平均2分) 4. 事務職員が該当部署に内線連絡(平均3分) 5. 該当部署の担当者が受付に来る(平均5分) 6. 事務職員が来客者を担当者に引き継ぐ(平均3分) 合計所要時間:13分/件(事務職員対応8分 + 待ち時間5分)
月間実績: - 来客数:月300件(営業日20日 × 15件/日) - 事務職員対応時間:300件 × 8分 = 2,400分(40時間) - 事務職員数:5名(交代で対応) - 各職員の月間対応時間:平均8時間
来客の内訳: - 取引先との打ち合わせ:180件(60%) - 営業訪問:60件(20%) - 採用面接:30件(10%) - その他(配達、点検など):30件(10%)
高橋は深くため息をついた。
「さらに問題があります。どの業務にAIを適用すべきか、明確ではありません。受付対応の自動化は一例ですが、他にも適用できる業務があるはずです。しかし、全社380名の業務を調査する時間もリソースもありません。そして、親会社と共通の基幹システムがあるため、独立したAIツールの導入を検討しています」
「高橋さん、AIツールを導入すれば、受付対応が自動化できると思っていますか?」
私の問いに、高橋は即答した。
「はい、そう期待しています。AIチャットボットで来客者に質問し、該当部署に自動転送すればいいと思っていました」
現在の理解(解決策先行型): - 期待:AIチャットボットで一気に解決 - 問題:問題の本質が見えていない
私は、問題発見と解決策探索を分離する重要性を説いた。
「問題は、『AIツールを導入すれば解決する』という解決策先行の考えです。ダブルダイヤモンド——デザイン思考のプロセスモデル。問題空間の探索(第1ダイヤモンド)と解決策空間の探索(第2ダイヤモンド)を分離します。まず『本当に解決すべき問題は何か』を発見し、次に『最適な解決策は何か』を探索することで、再現可能な価値創出を実現します」
「解決策を先行させるな。ダブルダイヤモンドで問題発見と解決策探索を分離せよ」
「問題は、いつも『見えている症状の奥に隠れた真の課題』だ。発見が先、解決が後」
「ダブルダイヤモンドの4段階を守れ。発見、定義、開発、提供」
3人のメンバーが分析を開始した。Geminiがホワイトボードに「ダブルダイヤモンド」を展開した。
ダブルダイヤモンドの構造:
[第1ダイヤモンド:問題空間]
発散 → 収束
Discover(発見) → Define(定義)
[第2ダイヤモンド:解決策空間]
発散 → 収束
Develop(開発) → Deliver(提供)
各段階: 1. Discover(発見):問題を広く探索する(発散) 2. Define(定義):本質的な問題を特定する(収束) 3. Develop(開発):解決策を広く探索する(発散) 4. Deliver(提供):最適な解決策を実装する(収束)
「高橋さん、まず受付対応の本質的な問題を発見することから始めましょう」
Phase 1:Discover(発見) - 問題を広く探索する(2週間)
調査方法:
調査1:事務職員へのインタビュー(5名) - 質問:「受付対応で困っていることは?」 - 時間:各1時間
調査2:来客者へのアンケート(100名) - 質問:「受付対応で改善してほしいことは?」 - 方法:QRコードでオンラインアンケート
調査3:観察調査(シャドーイング) - 期間:5日間(営業日) - 方法:事務職員の受付対応を観察・記録
発見された問題(発散):
事務職員の声: 1. 「来客のたびに作業が中断される」(5名全員) 2. 「誰宛の来客か分からないことが多い」(4名) 3. 「内線連絡で担当者が不在の場合、対応に困る」(5名全員) 4. 「配達業者の対応も含まれるが、これは別の課題」(3名) 5. 「来客予定を事前に把握できていない」(5名全員)
来客者の声(アンケート100名): 1. 「受付から担当者が来るまでの待ち時間が長い」(78名) 2. 「誰に会いに来たか伝えても、たらい回しにされることがある」(42名) 3. 「事前にアポイントを取っているのに、また説明が必要」(65名) 4. 「受付が無人の時間帯があり、困った」(15名)
観察調査の発見: 1. 事務職員は1日に3-5回、受付対応で席を立つ 2. 内線連絡時、担当者が不在の場合、平均4回の転送が発生 3. 来客予定表(Excelファイル)は、60%のケースで更新されていない 4. 営業訪問(飛び込み)の20%は、該当部署がすぐに分からない
Phase 2:Define(定義) - 本質的な問題を特定する(1週間)
発見された問題を収束:
問題のグルーピング:
グループ1:作業中断の問題 - 事務職員の作業が中断される - 1日3-5回、合計40分程度
グループ2:情報共有の問題 - 来客予定表が更新されていない(60%) - 誰宛の来客か分からない - 担当者不在時の対応が決まっていない
グループ3:待ち時間の問題 - 来客者の待ち時間が長い(平均5分) - たらい回しが発生する(42%)
本質的な問題の特定(収束):
Problem Statement(問題定義): 「来客予定情報が事前に共有されておらず、受付時に都度確認が必要なため、事務職員の作業が中断され、来客者の待ち時間も長くなっている」
Problem Metrics(問題の測定指標): - 事務職員の中断回数:1日15回 - 事務職員の対応時間:月40時間 - 来客者の待ち時間:平均5分 - 来客予定表の更新率:40%
Phase 3:Develop(開発) - 解決策を広く探索する(2週間)
解決策の発散:
アイデア1:AIチャットボット型受付 - 来客者がタブレットで質問に回答 - AIが該当部署を特定し、自動通知
アイデア2:事前登録システム - 来客者が事前にQRコードから来訪情報を登録 - 受付時にQRコードをかざすだけ
アイデア3:顔認証システム - 常連の来客者を顔認証で自動識別 - 該当部署に自動通知
アイデア4:スマートロック + AI音声対応 - 来客者がインターホンで音声入力 - AIが音声認識で来訪目的を理解し、自動通知
アイデア5:統合カレンダーシステム - 社内カレンダーと連携 - 来客予定を自動で受付画面に表示
各アイデアの評価:
評価軸: - A軸:導入コスト(1-5点、低いほど高得点) - B軸:効果(作業中断削減率)(1-5点) - C軸:来客者の利便性(1-5点)
評価結果:
| アイデア | A軸 | B軸 | C軸 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| アイデア2:事前登録 + QR | 5 | 5 | 4 | 14 |
| アイデア1:AIチャットボット | 3 | 4 | 3 | 10 |
| アイデア5:統合カレンダー | 4 | 3 | 3 | 10 |
| アイデア4:AI音声対応 | 2 | 4 | 4 | 10 |
| アイデア3:顔認証 | 1 | 3 | 5 | 9 |
選定:アイデア2(事前登録 + QRコード)を採用
Phase 4:Deliver(提供) - 最適な解決策を実装する(2ヶ月)
Month 1:プロトタイプ開発
システム設計:
来客者側のフロー: 1. 事前に訪問予定をオンラインフォームで登録 2. 来訪日、来訪時刻、訪問先部署・担当者、来訪目的を入力 3. QRコードが発行される(メール送信) 4. 当日、受付でQRコードをかざす 5. 自動で該当部署に通知(Slack連携)
事務職員側のフロー: 1. 受付タブレットで来客予定一覧を確認 2. QRコードがかざされると、自動で該当部署にSlack通知 3. 緊急時のみ、手動で内線連絡
担当者側のフロー: 1. Slackで来客通知を受信 2. 「受付に向かう」ボタンをタップ 3. 来客者に「担当者が向かっています」と自動表示
技術スタック: - フロントエンド:React + TypeScript - バックエンド:Node.js + Express - データベース:PostgreSQL - 通知:Slack API - QRコード生成:qrcode.js
開発費用: - システム開発:280万円 - タブレット購入(受付用):8万円 - 初期費用合計:288万円
Month 2:パイロット運用と効果測定
パイロット期間:1ヶ月
KPI測定:
KPI1:事前登録率 - 来客数:300件/月 - 事前登録:240件(80%) - 当日登録:60件(20%)
KPI2:事務職員の対応時間 - Before:月40時間(300件 × 8分) - After:月8時間(60件 × 8分、事前登録の240件は対応不要) - 削減率:80% - 削減時間:32時間/月
KPI3:来客者の待ち時間 - Before:平均5分 - After:平均1.5分(事前登録の場合) - 削減率:70%
KPI4:Slack通知の応答時間 - 担当者が「受付に向かう」ボタンをタップするまで:平均30秒 - 従来の内線連絡:平均3分 - 改善率:83%
KPI5:来客者満足度 - アンケート実施(100名) - 「待ち時間が短くなった」:92名(92%) - 「スムーズだった」:88名(88%)
Month 3-:全社展開と継続改善
改善1:AIチャットボットの追加(当日登録用) - 事前登録なしの来客者向け - タブレットでAIチャットボットが質問 - 来訪目的から該当部署を推定し、Slack通知
改善2:統合カレンダー連携 - Googleカレンダーと連携 - 来客予定を自動で受付画面に表示 - 担当者のスケジュールと自動照合
年間効果:
人件費削減(事務職員): - 削減時間:32時間/月 × 12ヶ月 = 384時間/年 - 人件費削減:384時間 × 3,200円 = 123万円/年
生産性向上(事務職員): - 中断回数削減:1日15回 → 3回(80%削減) - 集中作業時間増加による生産性向上:推定20% - 効果:年間200万円相当
来客者の時間価値: - 待ち時間削減:5分 → 1.5分(3.5分削減) - 月間来客300件 × 3.5分 = 1,050分(17.5時間)/月 - 年間削減:210時間 - 来客者の時給換算:5,000円 - 時間価値:105万円/年
合計年間効果: - 123万円 + 200万円 + 105万円 = 428万円/年
投資: - 初期開発:288万円 - 年間保守:60万円
ROI: - (428万円 - 60万円) / 288万円 × 100 = 128% - 投資回収期間:288万円 ÷ 368万円 = 0.78年(9.4ヶ月)
その夜、ダブルダイヤモンドの本質について考察した。
TechSavvy社は、「AIチャットボットを導入すれば解決する」という解決策先行の発想を持っていた。しかし、第1ダイヤモンド(問題空間の探索)で、本質的な問題が見えた。
問題定義:「来客予定情報が事前に共有されておらず、受付時に都度確認が必要なため、事務職員の作業が中断され、来客者の待ち時間も長くなっている」
この問題定義から、第2ダイヤモンド(解決策空間の探索)で5つのアイデアを発散させ、評価軸で収束させた。結果、「事前登録 + QRコード」という最適解を発見した。
重要なのは、問題発見と解決策探索を分離したことだ。解決策先行では、本質的な問題を見逃す。まず問題を広く発見(Discover)し、本質を定義(Define)する。次に解決策を広く開発(Develop)し、最適解を提供(Deliver)する。
事務職員の対応時間は80%削減(40時間 → 8時間)、来客者の待ち時間は70%削減(5分 → 1.5分)、年間428万円の効果、ROI 128%、投資回収9.4ヶ月を実現した。
「解決策を先行させるな。ダブルダイヤモンドで問題発見と解決策探索を分離せよ。発見、定義、開発、提供。4つの段階を踏むことで、再現可能な価値創出が生まれる」
次なる事件もまた、問題の本質を見出す瞬間を描くことになるだろう。
「ダブルダイヤモンド——第1ダイヤモンドで問題を発見・定義し、第2ダイヤモンドで解決策を開発・提供せよ。問題発見と解決策探索を分離することで、真の価値が生まれる」——探偵の手記より
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