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要約カード

JA 2026-08-13 23:00
DOUBLE_DIAMOND生産管理デジタル化

Globex Corporation社の生産データ管理システム導入相談。DOUBLE DIAMONDが解き明かした、解決策から入る偏りと、二度広げて二度絞る設計。

ROI事件ファイル No.595『タブレットを配ろうとしたが、なぜ紙が選ばれているかを広げていなかった』

JA 2026-08-13 23:00

ICATCH

タブレットを配ろうとしたが、なぜ紙が選ばれているかを広げていなかった


第一章:紙をやめたい、だが現場が動かない

「生産実績のデータを、可視化・管理できる仕組みを探しています」

Globex Corporation社の情報システム部長、広瀬絞氏は、そう言いながら事情を語った。「二〇二八年に基幹システムをリプレイスします。ただ、新しい基幹は金額に関する情報しか持たない仕様です。生産データは、部門で別に持つしかない。KPIも見たいので、取れる環境を作りたい」

「今は、どうやって記録していますか」とClaudeが尋ねた。

「紙の帳票に手書きして、後からシステムに打ち直しています」と広瀬氏が答えた。「四工場で一日およそ百二十枚。二度手間ですし、書き方も人によってばらばらです。タブレットを配って直接入力させたいのですが、現場の抵抗が強い。前にも一度試して、使われずに戻りました」

「その抵抗が、なぜ起きているかは、広げて調べましたか」と私が確認した。

「……調べていません」と広瀬氏が答えた。「タブレットにすることばかり考えていました。なぜ紙が選ばれ続けているのか。手袋なのか、明るさなのか、慣れなのか。理由を並べたことがない」

「解決策から入ると、同じ場所で二度つまずきますね」と私が応じた。「DOUBLE DIAMONDで分解しましょう」

第二章:DOUBLE DIAMONDが問う、二度広げて二度絞る

「この案件には、DOUBLE DIAMONDが必要です」

Claudeがホワイトボードに「発見・定義・開発・提供」と書いた。

「DOUBLE DIAMOND——二重のひし形とは、まず事実を広げてから課題に絞り、次に解決案を広げてから形に絞る、四段階のフレームワークです」と私が説明した。「肝は、いきなり二つ目のひし形から始めないこと。タブレットは解決案の一つにすぎない。なぜ紙が選ばれているかを広げないまま配れば、前回と同じ結末になります」

「まず現状のコストを測りましょう」とGeminiがROI Polygraphを開いた。広瀬氏から提供されたデータを入力する。

「月間のコストが出ました」とGeminiが読み上げた。「手書き帳票のシステム再入力工数が四工場合計で月平均百九十五時間、時給三千六百円で月七十万二千円。記入方法のばらつきによる読み取り不能と問い合わせが月平均四十万円。データが即時に見えないことによる異常発見の遅れが月平均三十六万円。KPI集計のための手作業集約が月平均三十二万円。過去の導入失敗による再投資の躊躇と検討停滞が月平均二十八万円。合計で月二百六万二千円。年間換算で約二千四百七十四万円」

広瀬氏が数字を見つめた。「打ち直しの手間だけ見ていました。読めない字の問い合わせや、一度失敗して止まっている分まで足すと、これほどとは」

「では、DOUBLE DIAMONDで設計します」と私が続けた。


[発見——なぜ紙なのかを、広げて集める]

「最初に、発見です」とClaudeが言った。「四工場の現場に入り、記入の瞬間を見る。手袋のまま書いているのか、粉塵があるのか、片手がふさがっているのか、明るさが足りないのか。前回なぜ使われなくなったかも、本人から聞く。ここは絞らず、事実だけを広げます」


[定義——課題を、入力装置の話から引き剥がす]

「次に、定義です」とGeminiが続けた。「集めた事実から課題を言い直します。多くの場合、課題は入力装置ではなく、記入項目が多すぎることや、書く場所が持ち場から遠いことにある。ここを言い直せば、解ける形の問いになります」


[開発——解決案を、装置に限らず広げる]

「定義の次に、開発です」と私が続けた。「タブレットだけを候補にしない。据え置きの端末、既存の機械からの自動取得、選択式に絞った入力、音声。二つ目のひし形の入口では、案を広く出します。一つしか案がないときは、比べていないだけです」


[提供——小さく出して、現場に直させる]

「最後に、提供です」とClaudeが続けた。「四工場に一斉展開しない。一工場の一工程で出し、担当者と一緒に直す。使われた形だけを横に広げる。前回の失敗は、完成品を配ったことにあります」


[投資回収を試算する]

ROI Proposal Generatorで試算しましょう」とGeminiが提案した。

  • 初期費用:四工場の現場調査・課題定義・入力方式の比較検証・生産データ管理システム構築・端末整備・KPI集計基盤の実装費用合計五百十万円
  • 月次費用:システム利用料・端末保守・運用継続費合算月二十三万円
  • 月次削減効果:帳票再入力の解消=月四十九万円(七割削減想定)、記入ばらつきによる読み取り不能と問い合わせの解消=月三十二万円、異常発見の早期化による損失抑制=月二十六万円、KPI集計の自動化=月二十六万円、合計月百三十三万円
  • 月次純削減:百三十三万円-二十三万円=月百十万円
  • 投資回収期間:五百十万円÷百十万円=約四・六ヶ月

「四ヶ月半の回収です」とGeminiが整理した。「効くのは、タブレットから入らず、二度広げた点です。装置を替えるだけの案は、現場の理由に触れていないので、また戻る。理由を広げてから絞るので、使われる形になる。投資が空振りしません」

広瀬氏が数字を確認しながら言った。「良い端末を選べば済むと思っていました。なぜ紙かを広げないと、何を作るかも決まらない」

「DOUBLE DIAMONDは、二度広げて二度絞る道具です」と私が応じた。

第三章:二度広げて二度絞る導入計画

「進め方を整理します」と私がホワイトボードの前に立った。

「第一ヶ月——四工場の現場観察と、紙が選ばれている理由の収集。第二ヶ月——課題の言い直しと、記入項目の絞り込み。第三ヶ月——入力方式の候補出しと比較検証。第四・五ヶ月——一工場一工程での試験運用と改修。第六ヶ月——四工場への展開とKPI集計基盤の実装。第七ヶ月以降——基幹リプレイスに向けた接続設計、対象工程の拡大」

「二〇二八年のリプレイスまで時間があります。それまで待ってもよいのでは」と広瀬氏が確認した。

「待つと、選ぶ材料がないまま迎えます」とClaudeが応じた。「リプレイス時に生産データの受け皿を決めるには、どの項目が本当に要るかを知っている必要がある。今のうちに現場で回しておけば、二年分の実データを持って設計に臨める。待つことより、小さく回して材料を作ることが先です」

広瀬氏がメモを取りながら言った。「端末を配る前に、なぜ紙かを広げる。順序が見えました」

第四章:理由を広げて、現場が使い始めた日

十ヶ月後、広瀬氏から報告が届いた。

記録の入力は、試験工程から順に変わった。「手袋のまま押せる大きな選択式にしたら、抵抗がほとんどなかった。前回、細かい文字を打たせようとしたのが原因だったと分かった」と広瀬氏は記していた。

打ち直しも消えた。入力された時点でデータになり、再入力の工程がなくなった。「一日百二十枚を打ち直していた作業が、まるごとなくなった。読めない字を確認する電話も消えた」と報告書にあった。

最も大きな変化は、検討の入り方に表れた。解決策から入る状態から、事実を広げてから絞る状態に変わった。「タブレット導入、という題目で稟議を書いていた。今は、なぜ今そうなっているか、を先に集めるようになった」と広瀬氏は記していた。

KPIも見えるようになった。集約の手作業が消え、日次で数字が並んだ。「月末に集計していたものが、翌朝には出る。異常への手当てが早くなった」と報告書にあった。

副次効果として、リプレイスの準備が進んだ。実データが、要件の材料になった。「基幹に何を残し、何を外に持つかを、実際に使われている項目で決められる。二〇二八年を、手ぶらで迎えずに済む」と広瀬氏は記していた。

広瀬氏の報告書の最後にはこう書かれていた。「デジタル化の悩みは、現場の抵抗だと思っていた。だが本当の問題は、タブレットを配ろうとして、なぜ紙が選ばれているかを広げていなかったことだ。DOUBLE DIAMONDで二度広げた瞬間に、作るべき形が決まった。端末を選ぶ前に、理由を広げることが先だった」

タブレットを配ろうとしたがなぜ紙が選ばれているかを広げていなかった会社が、二度広げて二度絞れる会社に変わった日、生産データのデジタル化は入力装置の置き換えから、事実を広げて課題を言い直す設計に変わっていた、と記されていた。

「デジタル化の相談は、たいてい『タブレットを入れたい』という形で来る。だが配る前に問うべきことがある。なぜ今、紙が選ばれているのか。DOUBLE DIAMONDが問うのは、発見と定義、開発と提供——二度広げて二度絞ることだ。理由を広げれば、装置ではないところに答えがある。解決策から入っていた会社が、事実を広げられた日、変わったのは端末の性能ではなく、絞る前に広げる視点そのものだった」


関連ファイル

double_diamond

使用ツール

  • ROI Polygraph — 帳票再入力工数・記入ばらつきによる問い合わせ・KPI集計の手作業コストの可視化
  • ROI Proposal Generator — 事実を広げて課題を言い直す設計を起点にした生産データ管理システム導入の投資回収シミュレーション

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