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要約カード

JA 2026-05-02 23:00
RCD基幹システム業務効率化

GlobalTech Solutions社の基幹システム導入支援依頼。RCDが解き明かした、Excel管理に隠れていた手入力の累積と、五人体制で十倍量に耐える業務基盤の設計。

ROI事件ファイル No.492『五人で十倍に耐える設計』

JA 2026-05-02 23:00

ICATCH

五人で十倍に耐える設計


第一章:Excelで回る千件超の顧客

「親会社案件と自社顧客が混在していて、Excelシートが部署ごとに分裂しています」

GlobalTech Solutions社のIT部門マネージャー、島田悠介氏は、そう言いながら共有フォルダを開いた。顧客マスター、案件管理、請求管理、稼働管理——ファイル名は揃っているが、フォーマットが微妙に違う。同じ顧客が異なるIDで登録されているケースもあった。

「親会社からコーヒーマシンの修理業務を受託していて、東日本エリアを担当しています」と島田氏が続けた。「親会社案件は親会社のシステムで管理される。問題は自社顧客側です。最近、自社顧客の案件が増えていて、Excel管理が限界を超えつつある」

「現状の体制と業務量を教えてください」とClaudeが尋ねた。

「自社顧客対応は五名」と島田氏が答えた。「顧客数が現在約八百社、案件は月平均百二十件。来期に向けて、自社顧客向けの新サービスを追加する計画があり、案件量が現在の五倍から十倍に伸びる見込みです」

「五倍から十倍を、現体制で受けたい、ということですね」と私が確認した。

「そうです」と島田氏が答えた。「人を増やすより、仕組みで吸収したい。Excelを使い続けても破綻するのは見えています。ただ、CRMやERPは選択肢が多すぎて、何から手を付けていいか分からない。製品比較を始める前に、自社の業務をどう整理するかが不明確です」

「製品選定の前に、現状を記録する段階が抜けています」とClaudeが静かに指摘した。

第二章:RCDが問う三段階の積み重ね

「この案件には、RCDが必要です」

Claudeがホワイトボードに三つの文字を書いた。R・C・D。

「RCDとは、Record(記録)・Check(点検)・Do(実行)の三段階で業務改善を進めるフレームワークです」と私が説明した。「PDCAが計画起点なのに対し、RCDは記録起点です。現状を可視化することから始める。基幹システム導入のように『現状の業務がそもそも整理されていない』段階では、いきなり計画を立てるとピントがずれます。記録して、点検して、その後に実行する。この順番が、製品選定の精度を決めます」

「まず現状のコストを測りましょう」とGeminiがROI Polygraphを開いた。島田氏から提供された業務データを入力する。

「月間のExcel管理コストが出ました」とGeminiが読み上げた。「五名が顧客情報・案件情報の手入力に月平均三百二十時間。時給三千二百円で月百二・四万円。情報重複・突合作業に月八十時間、月二十五万六千円。Excelファイル間のコピー&ペーストでのヒューマンエラー修正が月四十時間、月十二万八千円。月次・週次レポート作成が月六十時間、月十九万二千円。合計で月百六十万円。年間換算で約千九百二十万円」

島田氏が数字を見つめた。「業務量が今の五倍になれば、この数字も五倍になる」

「そのまま延長すれば年間九千六百万円」とClaudeが応じた。「人を増やしても、Excel運用では指数関数的に手間が増えます。仕組み側で抑えるしかありません」

「では、RCDで設計します」と私が続けた。


[R——Record:現状を完全に書き出す]

「最初の段階は、徹底的な記録です」とClaudeが言った。「五名にヒアリングして、各自が一日に行う業務を時系列で書き出してもらう。何の情報をどこから取得し、どこに入力し、誰に渡すか——一つひとつ記録します」

「製品選定の前に、ですか」と島田氏が確認した。

「前です」と私が答えた。「いきなりCRMやERPを比較すると、各製品の機能に合わせて自社業務を変形させることになります。記録を先に置けば、自社業務の輪郭が先に決まる。製品はその輪郭に合わせて選ばれる。順番が逆になると、後から不適合が露呈します」


[C——Check:記録を点検し、無駄と重複を見つける]

「次に、記録した業務を点検します」とGeminiが続けた。「同じ情報を何回入力しているか。同じ情報が何箇所に保存されているか。情報の取得元と利用先がどこにあるか。点検で見えてくるのは、業務の輪郭と、システム化すべき範囲です」

「点検の観点はどう設計しますか」と島田氏が尋ねた。

「四つの観点で点検します」とClaudeが答えた。「第一に、入力重複——同じデータを複数箇所に入れている業務。第二に、確認往復——人と人の間で情報を行き来させている業務。第三に、レポート再構成——既存データを別形式に作り直している業務。第四に、検索困難——情報を探すのに時間がかかっている業務。この四つに当てはまる業務が、システム化の優先対象です」


[D——Do:CRMとERPの分担を決めて実行する]

「実行段階で、CRMとERPの役割分担を決めます」と私が続けた。「CRMは顧客情報と案件管理。ERPは請求・原価・在庫・稼働管理。両方を統合パッケージで導入する選択肢もあるが、五名体制では運用負荷が高くなりすぎます。今回は連携可能な二製品の組み合わせで導入し、段階的に拡張する設計にします」

「段階導入の順序は」と島田氏が尋ねた。

「CRMから先行します」とGeminiが答えた。「点検で見えてきた最大の重複は、顧客情報の管理です。ここを統一すれば、五名の入力負荷が大きく下がる。CRMが安定稼働してから、二期目にERPを接続する。同時導入は失敗確率が高い」


[投資回収を試算する]

ROI Proposal Generatorで試算しましょう」とGeminiが提案した。

  • 初期費用:CRM導入・ERP導入・データ移行・連携設定・五名研修費用合計六百二十万円
  • 月次費用:CRM・ERP合算月二十二万円
  • 月次削減効果:手入力工数削減=月七十二万円(七十パーセント削減想定)、重複・突合作業削減=月二十一万円、ヒューマンエラー修正削減=月十万円、レポート自動化削減=月十六万円、合計月百十九万円
  • 月次純削減:百十九万円-二十二万円=月九十七万円
  • 投資回収期間:六百二十万円÷九十七万円=約六・四ヶ月

「半年強での回収です」とGeminiが整理した。「重要なのは二年目以降です。業務量が五倍になっても、システム上の処理時間はほぼ比例しません。手入力中心の現状なら五倍の工数が必要ですが、システム化後は一・五倍程度で吸収可能と推定します。五人体制を維持したまま売上を伸ばせる構造になります」

島田氏が数字を確認しながら言った。「人を増やすコストと比較すると、投資の意味が変わって見えますね」

「五人で十倍に耐える設計は、システム導入時にしか作れません」と私が応じた。

第三章:記録から始める導入計画

「進め方を整理します」と私がホワイトボードの前に立った。

「第一・二週——五名への業務記録ヒアリング、各自の一日業務の時系列化。第三週——記録の点検、四観点での無駄・重複の抽出。第四・五週——CRM三製品への要件提示、提案受領。第六週——CRM選定、契約。第七週から十週——CRM導入、データ移行、並行運用。第十一週——CRM単独稼働、二ヶ月のモニタリング。第十九週から——ERP選定開始、CRMとの連携要件を明確化したうえで進める」

「半年以上かかりますね」と島田氏が確認した。

「かかります」とClaudeが応じた。「ただし、CRM稼働の時点で月七十万円規模の削減が始まります。ERP導入を急がず、CRMで成果を出してから次に進む方が、現場の受容度が上がります。記録から始めた導入は、現場が自分たちの業務として理解できる導入になります」

島田氏がメモを取りながら言った。「製品比較から始めるつもりでした。記録から始めると、選定の精度が変わりそうです」

第四章:手入力が、業務から消えた日

九ヶ月後、島田氏から報告が届いた。

CRM導入から三ヶ月後、顧客情報の手入力作業は約七十五パーセント減少。Excelで分散していた顧客マスターは一元化され、同一顧客の重複登録は構造的にゼロになった。「同じ顧客名を打ち間違える、というミスがなくなった」と報告書にあった。

ERP導入は予定通り第十九週から開始。CRMで安定運用が確認できていたため、ERP側の要件定義はスムーズに進んだ。「CRM稼働で見えた業務フローを基にERPの要件を書けたので、ベンダーとの会話が早かった」と島田氏は記していた。

最も大きな変化は、新サービスを開始した第八ヶ月に起きた。自社顧客向けの新サービスにより案件量が前年比で四・二倍に増加した時、対応した社員数は五名のまま、残業時間は月平均十時間以内に収まった。「五倍になっても、五倍働かない設計が機能している」と報告書にあった。

副次効果として、レポート作成時間が大幅に短縮された。週次・月次のレポートは、CRMとERPの標準機能で自動生成され、担当者がExcelに加工する作業がなくなった。経営会議の資料が出るタイミングが、従来の月初十営業日後から、月初三営業日後に早まった。「経営判断が一週間早く動けるようになった」と島田氏の上長のコメントが添付されていた。

業務量十倍まではまだ達していないが、現体制で吸収できる手応えが社内に広がっていた。「人を増やすか、仕組みを変えるか——選択を間違えないですんだ」と島田氏は最後に書いていた。

業務記録から始めた一日が、五人で十倍に耐える基盤に変わった日だった。

「製品選定から始めると、製品に業務を合わせる導入になる。記録から始めると、業務に製品を合わせる導入になる。RCDが問うのは、記録・点検・実行の順序だ。記録なしの計画はピントが合わず、点検なしの実行は同じ無駄を別の場所に移すだけになる。Excelで百二十件を回していた五人が、システムで六百件を回すようになった日、増えたのは案件数で、変わらなかったのは人の数だった。十倍に耐える設計は、五倍の数字を見る前に作っておくしかない」


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