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要約カード

JA 2026-08-06 23:00
KPTAIガイドラインAI導入

TechInsights社のAIエージェントガイドライン策定相談。KPTが解き明かした、白紙から作ろうとする偏りと、在るもの・足りないもの・試すことを三つに分けて回す設計。

ROI事件ファイル No.588『一から作ろうとして、いま在るものを数えていなかった』

JA 2026-08-06 23:00

ICATCH

一から作ろうとして、いま在るものを数えていなかった


第一章:ガイドラインを作りたい、だが手が止まる

「AIエージェントのガイドラインを、一緒に作ってくれる会社を探しているんです」

TechInsights社の経営企画部、保田挑氏は、そう言いながら状況を語った。「親会社を含めた全体方針として、AIエージェントの導入を進めることが決まりました。それにあたって、社内のガイドラインが要る。ただ、うちには作れる人がいません」

「どこで止まっていますか」とClaudeが尋ねた。

「まず、知見がない」と保田氏が答えた。「何を書けばいいのかが分からない。それに、使う製品がまだ確定していないので、書きようがないという声もあります。予算は今期内、来年三月までに使い切らないといけない。時間だけが減っていく状態で」

「今、社内にすでに在るもので、使える決まりや資料はありますか」と私が確認した。

「……数えていません」と保田氏が答えた。「白紙から作るものだと思い込んでいました。親会社の方針も、情報セキュリティの規程も、既にあるのに。在るものを棚卸しして、足りないぶんだけ足す。そういう考え方をしていませんでした」

「一から作ろうとすると、量に圧倒されて手が止まりますね」と私が応じた。「KPTで分解しましょう」

第二章:KPTが問う、在るもの・足りないもの・試すこと

「この案件には、KPTが必要です」

Claudeがホワイトボードに「Keep・Problem・Try」と書いた。

「KPT——続けること、問題、試すこととは、現状を三つに仕分けて、次の一手を決めるフレームワークです」と私が説明した。「肝は、白紙から始めないこと。すでに在って機能しているものを数え、足りないものを名指しし、今期中に試せる形に落とす。三つに分ければ、書く量は思ったより少ない。そして、製品が決まらなくても書ける部分が、必ずあります」

「まず現状のコストを測りましょう」とGeminiがROI Polygraphを開いた。保田氏から提供されたデータを入力する。

「月間のコストが出ました」とGeminiが読み上げた。「ガイドライン策定の検討に割かれる社内工数が月平均百五十時間、時給四千円で月六十万円。方針不在のままAIが個別利用されることによるリスクが月平均四十二万円。知見不足による検討の空転が月平均三十六万円。製品未確定を理由とした選定の停滞が月平均三十二万円。今期内予算の未消化・失効リスクが月平均三十四万円。合計で月二百四万円。年間換算で約二千四百四十八万円」

保田氏が数字を見つめた。「作れないことだけ見ていました。決まらないまま各自が使っているリスクや、予算が消える損まで足すと、これほどとは」

「では、KPTで設計します」と私が続けた。


[Keep——すでに在るものを、数える]

「最初に、Keepです」とClaudeが言った。「親会社が示した全体方針、既存の情報セキュリティ規程、機密情報の取扱いルール、今期の予算枠。これらは既に在り、活きている。ガイドラインの骨格の半分は、ここから持ってこられます。白紙ではありません」


[Problem——足りないものを、名指しで書く]

「次に、Problemです」とGeminiが続けた。「足りないのは三つ。AI固有の判断基準、社内の知見、そして製品未確定という前提。漠然と足りないと言わず、名指しにする。名指しにすれば、外部に頼む範囲と、社内で持つ範囲が分かれます」


[Try——今期中に試せる形に落とす]

「Problemの次に、Tryです」と私が続けた。「製品が決まるのを待たない。どんな製品でも共通する原則——入力してよい情報の範囲、出力の検証責任、記録の残し方——を先に決める。製品固有の設定は、決まってから足す枝にする。今期の予算は、この原則づくりと、社内向けの研修に投じます」


[周期——三ヶ月ごとに、三つを書き直す]

「最後に、周期です」とClaudeが続けた。「ガイドラインは一度で完成させない。三ヶ月ごとに、続けるもの、問題、試すことを書き直す。AIの前提は変わり続けるので、更新されない規程はすぐ形骸化する。回し続ける仕組みまで含めて、ガイドラインです」


[投資回収を試算する]

ROI Proposal Generatorで試算しましょう」とGeminiが提案した。

  • 初期費用:既存規程の棚卸し・AI利用原則の策定・製品非依存部分のガイドライン作成・社内研修とワークショップ・更新運用の設計費用合計四百三十万円
  • 月次費用:ガイドライン運用・相談窓口の継続費合算月二十万円
  • 月次削減効果:策定検討工数の圧縮=月四十二万円(七割削減想定)、方針不在によるAI利用リスクの解消=月三十四万円、知見不足による検討空転の解消=月二十八万円、製品未確定を理由とした停滞の解消=月二十六万円、合計月百三十万円
  • 月次純削減:百三十万円-二十万円=月百十万円
  • 投資回収期間:四百三十万円÷百十万円=約三・九ヶ月

「四ヶ月弱の回収です」とGeminiが整理した。「効くのは、白紙から書き起こさず、在るものを数えてから足す点です。一から作ろうとすると量に圧倒されて着手できず、今期の予算が失効する。三つに仕分ければ、書く量が減り、製品を待たずに始められる。投資が空振りしません」

保田氏が数字を確認しながら言った。「知見がないから作れない、と思っていました。在るものを数えれば、足すのは一部だけだった」

「KPTは、在るもの・足りないもの・試すことを仕分ける道具です」と私が応じた。

第三章:三つに仕分ける導入計画

「進め方を整理します」と私がホワイトボードの前に立った。

「第一ヶ月——既存規程と親会社方針の棚卸し、Keepの確定。第二ヶ月——足りないものの名指しと、外部支援範囲の切り分け。第三・四ヶ月——製品に依存しないAI利用原則の策定。第五ヶ月——社内研修とワークショップの実施、今期予算の執行。第六ヶ月——運用開始と最初の書き直し。第七ヶ月以降——製品確定に合わせた枝の追加、三ヶ月周期での更新」

「製品が決まってから作ったほうが、手戻りがないのでは」と保田氏が確認した。

「待つほうが、手戻りより高くつきます」とClaudeが応じた。「製品が決まるまでの間も、社員は何らかの形でAIを使う。方針がなければ、その使い方が既成事実になる。原則を先に置けば、製品が決まったときに設定を足すだけで済む。製品を待つことより、原則を決めることが先です」

保田氏がメモを取りながら言った。「一から書き始める前に、在るものを数える。順序が見えました」

第四章:在るものを数えて、書き始められた日

十ヶ月後、保田氏から報告が届いた。

ガイドラインは、棚卸しの後、二ヶ月で骨格ができた。「既存の情報セキュリティ規程が、そのまま使える部分が想像以上に多かった。書き起こしたのは、AI固有の判断基準だけだった」と保田氏は記していた。

製品未確定の壁も消えた。原則と設定を分けたことで、待つ必要がなくなった。「製品が決まらないから書けない、という言い訳が成り立たなくなった。決まったときには、足すだけの状態にしてあった」と報告書にあった。

最も大きな変化は、着手の仕方に表れた。白紙から作ろうとする状態から、在るものを数えて足す状態に変わった。「知見がないから無理だ、で止まっていた。三つに仕分けたら、足りないのは一部だけで、そこだけ外に頼めばよいと分かった」と保田氏は記していた。

予算も、今期内に執行できた。原則づくりと研修に投じたことで、製品選定を待たずに使えた。「三月に予算を残して失効させる、が避けられた。来期の申請にもつながった」と報告書にあった。

副次効果として、規程の扱いが変わった。作って終わりにしない発想が根づいた。「一度決めたら固定、をやめた。三ヶ月ごとに、続けるもの、問題、試すことを書き直すようになった」と保田氏は記していた。

保田氏の報告書の最後にはこう書かれていた。「ガイドラインの悩みは、社内に知見がないことだと思っていた。だが本当の問題は、一から作ろうとして、いま在るものを数えていなかったことだ。KPTで三つに仕分けた瞬間に、書く量が現実的な大きさになった。書き始める前に、在るものを数えることが先だった」

一から作ろうとしていま在るものを数えていなかった会社が、在るものに足して回せる会社に変わった日、AIガイドラインの策定は白紙からの書き起こしから、在るもの・足りないもの・試すことを仕分けて回す設計に変わっていた、と記されていた。

「ガイドラインの相談は、たいてい『知見がないので作れない』という形で来る。だが書き始める前に問うべきことがある。いま在るものは、数えたか。KPTが問うのは、続けるものと、問題と、試すことだ。三つに仕分ければ、書く量は減り、製品を待たずに動き出せる。一から作ろうとしていた会社が、在るものを数えられた日、変わったのは社内の知見の量ではなく、在るものに足していく視点そのものだった」


関連ファイル

kpt

使用ツール

  • ROI Polygraph — 策定検討工数・方針不在によるAI利用リスク・予算失効リスクの可視化
  • ROI Proposal Generator — 在るもの・足りないもの・試すことの仕分けを起点にしたAIエージェントガイドライン策定の投資回収シミュレーション

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