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要約カード

JA 2026-08-08 23:00
5W1H業務自動化シャドーAI

AetherTech社のクローズドAI環境による業務自動化相談。5W1Hが解き明かした、自動化という言葉だけで進める偏りと、六つの問いで対象と範囲を確定させる設計。

ROI事件ファイル No.590『自動化したいと言っていたが、何を誰がどこまで、がなかった』

JA 2026-08-08 23:00

ICATCH

自動化したいと言っていたが、何を誰がどこまで、がなかった


第一章:もっと自動化したい、だが話が進まない

「閉じたAI環境で、業務を自動化できる会社を探しているんです」

AetherTech社の情報システム部長、六反田明氏は、そう言いながら状況を語った。「RPAは既に入れています。ただ、人の手が完全に不要になるところまでは行っていない。議事録の作成や契約書の確認でもAIを試してはいますが、結局どこかで人が判断している」

「他に、気にかかっていることはありますか」とClaudeが尋ねた。

「シャドーAIです」と六反田氏が答えた。「各自が無料のChatGPTを勝手に使っている。情報漏洩が怖い。会社としてのAI活用方針を決めて、閉じた環境に集約したい。少ない人数で回せる体制にして、ノウハウも社内に残したいんです」

「その自動化は、何の業務を、誰が、どこまでやる想定ですか」と私が確認した。

「……そこが曖昧です」と六反田氏が答えた。「自動化したい、という言葉だけで動いていました。議事録も契約書もメールも図面も、全部やりたい。でも、どれを、なぜ、誰の業務として、いつまでに、どこで、どうやるのか。決めていません。だからベンダーと話しても、提案が噛み合わない」

「言葉だけでは、話が進みませんね」と私が応じた。「5W1Hで分解しましょう」

第二章:5W1Hが問う、六つで対象と範囲を確定させる

「この案件には、5W1Hが必要です」

Claudeがホワイトボードに「What・Why・Who・Where・When・How」と書いた。

「5W1H——六つの問いとは、曖昧な要望を、対象と理由と主体と場所と期限と手段に確定させるフレームワークです」と私が説明した。「肝は、自動化という言葉のまま進めないこと。何を、なぜ、誰の業務として、どこで、いつまでに、どう。この六つが埋まって初めて、提案も見積りも比較できる。噛み合わない打ち合わせは、たいていどれかが空欄です」

「まず現状のコストを測りましょう」とGeminiがROI Polygraphを開いた。六反田氏から提供されたデータを入力する。

「月間のコストが出ました」とGeminiが読み上げた。「議事録作成・契約書確認・メール選別の手作業工数が月平均百八十五時間、時給三千八百円で月七十万三千円。無料AIの個別利用による情報漏洩リスクが月平均四十六万円。RPAで拾いきれない判断業務の残存が月平均三十六万円。図面管理の属人化による探索・照合が月平均三十二万円。ノウハウが個人に留まることによる再現不能が月平均三十万円。合計で月二百十四万三千円。年間換算で約二千五百七十二万円」

六反田氏が数字を見つめた。「効率化が進まないことだけ見ていました。シャドーAIのリスクや、ノウハウが残らない損まで足すと、これほどとは」

「では、5W1Hで設計します」と私が続けた。


[What・Why——何を、なぜ自動化するのかを名指しする]

「最初に、対象と理由です」とClaudeが言った。「議事録の作成、契約書の条項チェック、メールの一次選別、図面の検索。この四つを名指しする。理由も分ける。議事録は工数削減、契約書はリスク低減、メールは対応速度。理由が違えば、求める精度も違います」


[Who・Where——誰の、どこの業務かを決める]

「次に、主体と場所です」とGeminiが続けた。「本社の営業部門か、支社の技術部門か。運用を担うのは情報システム部門か、業務部門か。誰が使い、誰が保守し、誰が判断の責任を持つか。ここが空欄だと、導入後に宙に浮きます」


[When——いつまでに、どの順で切り替えるか]

「主体の次に、期限です」と私が続けた。「シャドーAIの解消は即時。閉じた環境の用意と利用方針の周知を最優先で置く。議事録は三ヶ月後、契約書は半年後。全部同時ではなく、リスクの高いものから期限を切ります」


[How——閉じた環境で、どう動かすか]

「最後に、手段です」とClaudeが続けた。「社内に閉じたAI基盤を置き、既存のRPAとつなぐ。RPAが手順を運び、AIが判断を担う。そして、使い方と失敗例を社内に蓄積する仕組みを同時に作る。ノウハウを残すことは、手段の一部です」


[投資回収を試算する]

ROI Proposal Generatorで試算しましょう」とGeminiが提案した。

  • 初期費用:対象業務の確定・クローズドAI環境の構築・既存RPAとの連携・議事録/契約書/メール処理の実装・利用方針策定と社内教育費用合計五百二十万円
  • 月次費用:AI基盤利用料・運用保守継続費合算月二十四万円
  • 月次削減効果:議事録・契約書・メール処理の自動化=月五十四万円(七割削減想定)、シャドーAI解消による情報漏洩リスクの低減=月三十八万円、図面探索・照合の解消=月二十六万円、ノウハウ蓄積による再現性の確保=月三十万円、合計月百四十八万円
  • 月次純削減:百四十八万円-二十四万円=月百二十四万円
  • 投資回収期間:五百二十万円÷百二十四万円=約四・二ヶ月

「四ヶ月強の回収です」とGeminiが整理した。「効くのは、自動化という言葉で止めず、六つを埋める点です。空欄があると、ベンダーは自社の得意な形で埋めてくるので、提案が比較できない。六つが埋まっていれば、同じ土俵で見積りが並ぶ。投資が空振りしません」

六反田氏が数字を確認しながら言った。「良いAI環境を探せば済むと思っていました。六つを埋めないと、探しようもない」

「5W1Hは、曖昧な要望を対象と範囲に確定させる道具です」と私が応じた。

第三章:六つを埋める導入計画

「進め方を整理します」と私がホワイトボードの前に立った。

「第一ヶ月——対象業務の確定と、六つの問いの棚卸し。第二ヶ月——クローズドAI環境の構築と、利用方針の周知によるシャドーAIの解消。第三・四ヶ月——議事録作成の自動化と既存RPAとの連携。第五ヶ月——契約書チェックとメール一次選別の実装。第六ヶ月——図面管理の整備と効果検証。第七ヶ月以降——ノウハウ蓄積の定着、対象部門の拡大」

「一番効果が大きい契約書から着手したほうが、良くないですか」と六反田氏が確認した。

「期限は、効果ではなくリスクで切ります」とClaudeが応じた。「シャドーAIは今この瞬間も動いていて、一度漏れれば取り返しがつかない。閉じた環境を先に用意すれば、そこが受け皿になって漏洩が止まる。効果の大きい順に並べることより、いつまでに何を、を決めることが先です」

六反田氏がメモを取りながら言った。「自動化を語る前に、六つを埋める。順序が見えました」

第四章:六つが埋まって、話が動いた日

十ヶ月後、六反田氏から報告が届いた。

シャドーAIは、閉じた環境の用意と同時に消えた。「使うなと言うだけでは止まらなかった。使える場所を先に作ったら、二週間でほぼ全員が移った」と六反田氏は記していた。

議事録も自動で上がるようになった。RPAが運び、AIが要約する形が、手作業を消した。「会議の後に一時間かけて書き起こしていたものが、確認だけで済むようになった」と報告書にあった。

最も大きな変化は、依頼の仕方に表れた。自動化したい、という言葉だけの状態から、六つを埋めて話す状態に変わった。「ベンダーと話が噛み合わなかったのは、こちらが空欄のまま持ち込んでいたからだった。六つを埋めて渡したら、提案が同じ土俵で並んだ」と六反田氏は記していた。

ノウハウも社内に残り始めた。使い方と失敗例を蓄積する仕組みが、属人化を防いだ。「上手く使える人だけが得をする状態が終わった。少ない人数でも回せる体制になった」と報告書にあった。

副次効果として、依頼書の書き方が変わった。他の案件でも六つを埋める発想が根づいた。「やりたいことを書く、で終わらせるのをやめた。何を、なぜ、誰が、どこで、いつまでに、どう、で書くようになった」と六反田氏は記していた。

六反田氏の報告書の最後にはこう書かれていた。「業務自動化の悩みは、RPAの限界だと思っていた。だが本当の問題は、自動化したいと言っていただけで、何を誰がどこまで、がなかったことだ。5W1Hで六つを埋めた瞬間に、提案も見積りも比べられるようになった。ベンダーを探す前に、六つを埋めることが先だった」

自動化したいと言っていたが何を誰がどこまでがなかった会社が、六つを埋めて依頼できる会社に変わった日、業務自動化は言葉だけの要望から、対象と理由と主体と場所と期限と手段を確定させる設計に変わっていた、と記されていた。

「業務自動化の相談は、たいてい『もっと自動化したい』という形で来る。だがベンダーを探す前に問うべきことがある。何を、誰が、どこまで、は決まっているか。5W1Hが問うのは、対象と理由と主体と場所と期限と手段だ。六つが埋まれば、提案は同じ土俵に並び、比べられる。自動化という言葉だけで動いていた会社が、六つを埋められた日、変わったのはAIの性能ではなく、曖昧な要望を範囲に確定させる視点そのものだった」


関連ファイル

5w1h

使用ツール

  • ROI Polygraph — 議事録・契約書・メール処理工数・シャドーAIリスク・属人化コストの可視化
  • ROI Proposal Generator — 六つの問いによる対象確定を起点にしたクローズドAI環境での業務自動化の投資回収シミュレーション

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