ROI事件ファイル No.565『入れた道具が、効いているか分からなかった』
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入れた道具が、効いているか分からなかった
第一章:色々使っている、だが効いているか分からない
「AIエージェントを検討したいんです。でも、今使っている道具が効いているのかも、正直分からなくて」
建設業向けソリューションを提供するConstructAI社のCEO、建元丈氏は、そう言いながら状況を語った。「ChatGPTやGeminiは無料版を検索の補助に。建設向けにはArchiXでパースやCG化、Office365のCopilotも一部。色々使ってはいるんです。ただ、AI活用をもっと進めたくて、同業で実績のあるAIエージェントがあれば入れたい」
「いま使っている道具は、投じた分だけ返っていますか」とClaudeが尋ねた。
「……そこが測れていません」と建元氏が答えた。「なんとなく便利、で使っている。いくら払って、いくら分の効果が出ているか、を出したことがない」
「営業アシスタントの事務作業は、どうですか」と私が確認した。
「負担が大きいです」と建元氏が答えた。「納期確認や見積書作成のルーチンに時間を取られている。AIで軽くしたいけれど、どのツールにいくら投じれば、どれだけ返るのか。その見積もりがないまま、次の道具を足そうとしている」
「効いているか測らないまま道具を足しても、ムダが積み上がりますね」と私が応じた。「ROASで分解しましょう」
第二章:ROASが問う、投下額に対して効果が返っているか
「この案件には、ROASが必要です」
Claudeがホワイトボードに「投下額・効果・その比」と書いた。
「ROAS——Return On Advertising Spend、投下額に対する効果の比とは、投じた費用一円あたりどれだけの効果が返るかで施策を裁くフレームワークです」と私が説明した。「肝は、なんとなくの便利を、比で測ること。もともとは広告費の指標だが、AIツールの投下にも同じ発想が使える。投じた額に対して、削減できた工数や生んだ価値がどれだけか。比を出せば、足すべき道具と外すべき道具が分かれます」
「まず現状のコストを測りましょう」とGeminiがROI Polygraphを開いた。建元氏から提供されたデータを入力する。
「月間のコストが出ました」とGeminiが読み上げた。「営業アシスタントの納期確認・見積書作成などルーチンワークの工数が月平均百六十時間、時給三千八百円で月六十万八千円。AIツールの効果未測定による投下判断の曖昧さで生じるムダが月平均三十四万円。限定的なAI活用による効率化未達が月平均三十六万円。事務作業に人手が取られ高度業務に回せない機会損失が月平均三十八万円。ツール乱立による重複・非効率が月平均二十六万円。合計で月百九十五万六千円。年間換算で約二千三百四十七万円」
建元氏が数字を見つめた。「便利だから使う、で済ませていました。効果を測らないまま道具を足すムダまで足すと、これほどとは」
「では、ROASで設計します」と私が続けた。
[投下額——今かけている費用を洗い出す]
「最初に、投下額を洗い出します」とClaudeが言った。「ChatGPT、Gemini、ArchiX、Copilot——今どのツールにいくら投じているか、利用状況を詳細にヒアリングする。かけている額が見えて初めて、比の分母が定まります」
[効果——削減した工数と生んだ価値を測る]
「次に、効果を測ります」とGeminiが続けた。「各ツールが、どれだけの工数を削減し、どれだけの価値を生んでいるか。営業アシスタントの事務作業に絞り、自動化で浮く時間を数字にする。効果が比の分子です」
[比較——ツールごとのROASを並べる]
「効果の次に、比を並べます」と私が続けた。「投下額に対する効果の比を、ツールごとに算出する。効いている道具と、費用倒れの道具が並んで見える。次に入れるAIエージェントも、この比で候補を裁きます」
[選定——比の高い一手に投じる]
「最後に、比の高い一手に投じます」とClaudeが続けた。「営業アシスタントの事務自動化に効くAIエージェントを選び、納期確認と見積書作成のシナリオを構築する。全部に薄く投じず、ROASの高い一点に集中する。浮いた人手を、高度なタスクに回します」
[投資回収を試算する]
「ROI Proposal Generatorで試算しましょう」とGeminiが提案した。
- 初期費用:AIエージェント導入・事務自動化シナリオ構築・既存ツール整理・営業支援設定・運用教育費用合計四百七十万円
- 月次費用:エージェント利用料・運用継続費合算月二十万円
- 月次削減効果:事務ルーチンの自動化=月四十三万円(七割削減想定)、ツール整理による重複解消=月二十六万円、AI活用拡大による効率化=月三十四万円、高度業務への再配置効果=月三十四万円、合計月百三十七万円
- 月次純削減:百三十七万円-二十万円=月百十七万円
- 投資回収期間:四百七十万円÷百十七万円=約四・〇ヶ月
「四ヶ月の回収です」とGeminiが整理した。「効くのは、なんとなくで道具を足さず、投下額と効果の比で裁く点です。効いているか測らないと、ムダな道具が積み上がる。ROASで比を出し、高い一点に集中するから、投じた分が返る。投資が空振りしません」
建元氏が数字を確認しながら言った。「便利そうだから足す、を繰り返していました。比で測ると、どこに投じるべきかが決まる」
「ROASは、投下額と効果の比で道具を裁く道具です」と私が応じた。
第三章:比で裁く導入計画
「進め方を整理します」と私がホワイトボードの前に立った。
「第一ヶ月——既存AIツールの投下額と利用状況の洗い出し。第二ヶ月——ツールごとの効果測定とROASの算出。第三・四ヶ月——事務自動化シナリオの構築とAIエージェント導入。第五ヶ月——既存ツールの整理と運用教育。第六ヶ月——試験運用と効果検証(ROASの再測定)。第七ヶ月以降——比の高い領域への投資拡大、ツール構成の継続見直し」
「新しいエージェントも、また効果が分からなくなりませんか」と建元氏が確認した。
「なりません」とClaudeが応じた。「分からなくなるのは、入れっぱなしで測っていないからです。ROASで投下額と効果の比を出す仕組みを先に作れば、新しいエージェントも同じ物差しで裁ける。効いていれば投資を増やし、費用倒れなら外す。なんとなくの便利が、数字で判断できる投資に変わります」
建元氏がメモを取りながら言った。「道具を足す前に、効いているかを比で測る。順序が見えました」
第四章:効いているかが、測れた日
十ヶ月後、建元氏から報告が届いた。
営業アシスタントの事務作業は、エージェント導入後、大きく軽くなった。「納期確認や見積書作成のルーチンが自動化されて、手が空いた。空いた時間を、提案や顧客対応に回せるようになった」と建元氏は記していた。
ツールの構成も整理された。効果の低い重複が外され、効く道具に絞られた。「なんとなくで増やしていたツールが、比で見たら費用倒れのものもあった。整理したら、月々のムダが減った」と報告書にあった。
最も大きな変化は、道具の入れ方に表れた。便利そうだから足す状態から、比で裁いて投じる状態に変わった。「新しいAIを、実績があるらしいから、で入れていた。ROASで測るようにしたら、投じる前に効果を見積もれるようになった」と建元氏は記していた。
高度業務への再配置も進んだ。事務から解放された人手が、付加価値の高い仕事に回った。「アシスタントが雑務に埋もれていたのが、本来やるべき仕事に集中できるようになった」と報告書にあった。
副次効果として、投資の見方が変わった。便利の実感でなく、比で判断する発想が根づいた。「便利だから使う、をやめた。一円あたりいくら返るか、で考えるようになった」と建元氏は記していた。
建元氏の報告書の最後にはこう書かれていた。「AI活用の悩みは、良いツールが見つからないことだと思っていた。だが本当の問題は、入れた道具が効いているかを測っていなかったことだ。ROASで投下額と効果の比を出した瞬間に、どこに投じるべきかが見えた。道具を足す前に、比で測ることが先だった」
入れた道具が効いているか分からなかった会社が、比で裁いて投じられる会社に変わった日、AIエージェント活用はなんとなくの導入から、投下額と効果の比で裁く設計に変わっていた、と記されていた。
「AI活用の相談は、たいてい『良いツールを入れたい』という形で来る。だが道具を足す前に問うべきことがある。今入れている道具は、投じた分だけ返っているのか。ROASが問うのは、投下額に対する効果の比だ。比を出せば、足すべき道具と外すべき道具が分かれる。入れた道具が効いているか分からなかった会社が、比で測れた日、変わったのはツールの性能ではなく、投下額と効果の比で道具を裁く視点そのものだった」
関連ファイル
使用ツール
- ROI Polygraph — 事務ルーチン工数・効果未測定によるムダ・高度業務への再配置機会損失の可視化
- ROI Proposal Generator — 投下額と効果の比を起点にしたAIエージェント活用の投資回収シミュレーション